【感想】「アウレリャーノがやってくる」を読んで(ネタバレ注意)
2021/12/21 / 2022/01/26

この本に出会った時の第一印象は、「よくわからない。」です。
「アウレリャーノ」って誰?
出版社は…「破滅派」…?
疑問がたくさんあります。
そして、いざ読んでみると、まるで映画のような構成で物語が進んでいき、終始ドキドキしながら読むことができました。
「疑問」が一つ解決されるたび、物語がハッピーエンドに向かうのか、バッドエンドに向かうのかわからなくなります。
本記事では、なぜこの小説を面白いと感じたか、私の感想を書いていこうと思います。
注意
ここから多少のネタバレあります!
小説の内容やオチなど詳しく書きませんが、あらすじや一部登場人物の特徴など書きますので、みたくない方はブラウザバックをお願いします。
映画みたいな物語展開
「アバンタイトル」と言葉をご存じでしょうか?
映像作品でオープニング(本編)前にチョロっと流れる映像のことです。
映画やアニメなどでよくみられます。
「アウレリャーノがやってくる」は、アバンタイトル的なシーンから物語が始まります。
冒頭数ページ、「アマネヒト」と言う男性が「潮」と言う女性と新大久保の豚肉専門店で食事をするシーンが描かれます。
そして、食事後ホテルに行きます。
ここで、いくつかのキーワードが出てきます。
これらは全て物語の伏線になってきます。
- 破滅派
- 皇子
- 横恋慕
「破滅派」って何?「皇子」って誰?「横恋慕」ってどういうこと?
そもそも「アマネヒト」、「潮」って誰?
そう考えながらドキドキしてページをめくることになります。
「アウレリャーノ」と言う言葉は序盤に一切出てこないところも面白いところだと感じました。
また、読み直すともっとたくさんの伏線が張ってあることもわかります。
何回でも読み直したくなります。
唐突な、回想シーン!
「アマネヒト」と「潮」のホテルシーンの直後、回想シーンがはじまります。
「アマネヒト」の生い立ちから。ここからが本編です。
この生い立ちでは、しばらく「潮」も「皇子」も「アウレリャーノ」も出てきません。
アマネヒトという人物の掘り下げと詩人になる過程を丁寧に描いていきます。
ここで美人の姉も登場します。詳しくは…、ぜひ読んでください。
アマネヒトは書いた!何を?詩ではなく…
この物語は、たくさん特徴的なフレーズが登場します。
アマネヒトは自分の言葉というものを長らく持たなかった。〜(中略)〜どうせ他人が作った言葉だ。
これは、アマネヒトの重要な価値観として書かれます。
君にも言っておくよ。瑣細なことで愛する人とすれ違ったりするかもしれない。それを避けるための呪文はただ一つ。想像力だよ。
これは、たぶん作者の価値観です。
他にもたくさんありましたが、特に好きなフレーズを紹介しました。
これらのフレーズが後々伏線?のようになっていて、少しずつ変化して行ったり、最後まで変わらなかったり…。
語りたいことはたくさんありますが、ネタバレになってしまうので、自粛します。
実在する?登場人物
アマネヒトは出版社「破滅派」の人と関わっていくことになります。
そして、面白いことに、「破滅派」の人たちはモデルの人が実在しているのでした。
破滅派のホームページを探すと、ほろほろ落花生さんのページがあります。
ほろほろさんは小説の中でめちゃめちゃいいキャラしているのでそれも見どころです。
ちなみに、小説の最後に「「破滅派」、「高橋文樹」、「山谷感人」以外は実在の人物・団体・事件と一切関係がありません」と書かれているので、完全なる同一人物ではなさそうです。
あとがき
私が一番好きな登場人物は「皇子」です。
皇子は思いやりがあって、努力家で能力が高くて、すごいいい人なのですが、不器用です。
行動力がありすぎて人に引かれたり、懐に入り込むのが得意なので、警戒心が強い人に嫌われます。
あと、相手のことを観察することが得意で「想像力」のあるキャラクターだと思いました。
しかし、作中で皇子と「潮」の間に「すれ違い」が起きていたように思います。
不器用で、いろんなことが裏目に出ているように見えますが、それでも最後まで「いい人」なところが好きです。
後書きでは、「皇子」は作者である「高橋文樹」氏本人がモデルだと書かれています。
まとめ
ぜひ本書を読んでもらいたいです。
読んでる最中はずっとドキドキしました。
そして、読んだ後、とてもスッキリとした気持ちになりました。
文章の一つ一つの表現が心地よく、とても読みやすいです。
語感?にこだわっているのか、小説なのに詩を読んでいるような感じで読めました。
余談:高橋文樹さんについて
高橋さんは、WordPressの開発者です。
以前TwitterでWordPressのテストでわからないところがあったので、相談したところ、快く答えてもらいました。
その時に、本を書いていることを教えてもらい本を購入することになりました。
オンライン文芸誌の「破滅派」を創業した方です。
経歴など調べるとめちゃめちゃ面白いので、ぜひみなさんも調べてみてください。